Fuji to Higanzakura

料理簡易記録、ときどき、?

綺麗でびっくりしたってよ

介護士の方が、訪問診察をずっとしてくれていたお医者さんに連絡をとってくれ、先生が来て宣告をいただいた。(在宅看取りの場合は救急車を呼んだりして別のお医者さんからの死亡診断になると警察介入になって大変らしい。)

苦しそうな気配が微塵もない綺麗なお顔で、母お得意の眉間の皺よせもなかった。

チューブも外されてすっきりして、眠ってるようにしか見えなかったけれど、なおしてもどうしても少しお口が空いてしまうので、身体の処置を色々しだしてくれていた介護士の方に、なんとかならない?と聞くと、葬儀社の方に頼むとやってくれる、と教えてくれた。「葬儀社の互助会とか入ってましたか?そこにすぐ電話してね」と言われ、母が寝付いたばかりの頃、リビングのあそこにある葬儀マニュアルパンフを読んでおけ、と言われていた冊子を出して電話したら、さっくりと互助会登録が確認されて、ドライアイスがその日のうちに届いた。

で、ドライアイスのおにいさんに聞いたらお口を閉じてもらうのは別料金だそうだ。お、とか思って、父の方を見たら、「いいよ、なおしてやって」と間髪入れず答えが返ってきた。

呼吸が止まるのを目のあたりにして、咄嗟に人口呼吸をしたが、頭と唇が冷たくなってきた、と言ってそれをやめた父は、そのあとも、唇が白くなったな、頭が最初に冷たくなるんだな、と母を触りながらつぶやいていた。文字通りに自分の手の平の中で母の顔の変化を感じながら看取るって、どんな感じなのか、父の間髪入れずの返事にどんな思いがあったかはわからないけれど、うん、お口は閉じてあげたいです。よかった。

お顔のお直しに来るのは翌日ということだった。

なんだかもう後は、葬儀社ベルトコンベアーにのるだけみたいだし、母は数日は家にいることになりそうだし、締め切りを抱えていた姉は、姉宅のパソコンを根こそぎひっこぬいて実家に持ち込み、数日拠点を実家にしてリモートワークしてくれるというし急に、今自分はなんか考えてもしょうがないな、とすっぽ抜けて、あれ?明日、別に仕事にいけるやん、となって、翌日は仕事に行った。

仕事から戻ってきて駅に迎えに来てくれた父に「お口どうなった?」と聞いたら、「えらい綺麗になってびっくりした。」と照れもてらいもなく言われ、こっちがびっくりした。白かった唇は閉じられてうっすらベージュピンクになっていた。そのままででもいいお顔だったから、お口があいていなければ処置(いわゆるエンバーミングになるのかな)は頼まなかったろう。お口をあけていたのは計算でしたかままちゃん。

脳梗塞後はなぜか総白髪だった母の髪が少しずつ黒くなりだした。家族成員は皆(母を筆頭に!だったけれど)お口が悪い。「頭の内側に血をまわさなくて済むようになった分、外にまわって若返っちゃってるよ」と家族は母の前でも話していた。遺影用に出した5年前の写真より若い。少し頬はこけたけどそれも趣だねままちゃん。心不全で手足はむくんでいて、その場合は亡くなったあと身体の水が回って顔がむくんじゃうことがあるから、頭の方はあげておくね、とベッドの傾きなど、介護士の方も気を遣ってくれた。お顔もむくんでないよ、ままちゃん。

1日出ていた間に、母だけでなく、家も綺麗になっていた。私の結納で使ってからうん十年、座敷として使われることもなくなって物置と化していた一番奥の座敷が、物がどけられ綺麗に掃除されてピカピカになっていた。棺を運びだすことになる動線上にある廊下の家具類も一つの部屋に片付けられて、家の中に風が通っていた。車庫まで掃き清められている。義理仕事でできることじゃない。お義兄さんこれはブラボーすぎだ泣。これは大変だったよね泣。

葬儀社との細かい打ち合わせは父がして、姉は、部屋にこもって仕事していたという。「結局ここにいただけやん」と姉に言ってみたら、「大丈夫。〇〇(義兄の名)が色々してくれてたもん」と誇らしげなドヤ顔。いつもの姉節です、はい。

義兄が、奥の部屋の壁かけ花瓶にお花さしてよ、と言った。そこに花が入るのもいったいいつぶりか。結納のとき入ってたかなぁ。床の間にはきっと母が何か活けていたろうけれど。

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挿したときから2週間後くらい。蕾からたくさん咲き誇った。