Fuji to Higanzakura

料理簡易記録、ときどき、?

人と牛と蘭に通底するもの(4)

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先の記事で、蘭は全滅した、と書いたが、正確には数鉢だけサバイブして花を咲かせた。全部を切り花にして父はそれを家に持ち混んだ。温室の中は、それで全き廃墟になった。

切った蘭の花を、水に挿してくれと言われ、花瓶に挿した。母寝室に花を欠かさずに活けるようになっていたが、父の蘭は、なぜか母寝室に持ち込む気持ちにならず、玄関に置いた。

母寝室の花は、1週ももたずに萎れることも、それよりもずっと長くもつこともあったけれど、母はたいてい、1週以上そこにある花はなぜか見なくなってしまうので、1週ごとに花を取り換えた。父親も、台風で落ちたサルスベリの花の枝を持ってきたり、庭にツワブキが咲いてるぞ、とか気に掛けるようになり、私がいない間に、母寝室の花がくたびれてくると、父は切り戻しなどをしてくれていたが、かなりくたびれてしまった花も処分はせず、私が実家に来るまでそのままで、何度か切り戻されて短くなった萎れた花が入っていたりした。

でも、玄関に活けた蘭については、しおれた花は、父は自分でもいで処分していた。胡蝶蘭の花はとても長くもつが、穂先から離れている方の花から順に萎れていく。

一つ一つ花の数が減っていった。

最後に、穂先に一つだけ花がついていた。オー・ヘンリーの「最後の一葉」を連想して、「パパさん、これ、後ろに花の絵を描かなだね」というと、「そうなんだよ」と返ってきた。

しばらくすると、水が入ったままの花瓶だけが、そこに残っていた。

水を捨てて花瓶を片づけた。