Fuji to Higanzakura

料理簡易記録、ときどき、?

パンとショパンとシュミラークル

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東京に行った方から下北沢のカイソさんのパンを、いただきました。すぐ売り切れちゃうらしく開店と同時に入ったとか。ありがとうございます。なぜか食べ物に恵まれる。どこに感謝しとけばいいのか。なむー。

京都のル・プチメックのパンを思い出し。

自分の中では、この二つのパンやさんのパンは、どこがお仲間なんだろう。

くださった方は、「ル・プチメックさんにしても、カイソさんにしてもめちゃめちゃセンスがいいんだ」と言っていて、そう言ってしまえば、そうなんだけどね。

おいしいパンを作るにあたっての、お勉強はきっといろいろあるのだと思うのだけど。

例えば、パリで食べたパンがおいしかったら、そこで使ってる小麦を使うとかといった、そういう方法もあると思うのだけど、なんか、そういうことじゃなくって。

今日本のここに自分がいる、ということまで信じたうえで、どうすると自分にとっておいしいパンになるのか、最終的には、自分の感覚だけを信じて「!」を探ったり降ってくるのをキャッチしてるのが伝わってくるような。なのにどちらも、むしろ逆説的に、パリでおいしいパンやさんに出会ったときの感動ってこういう感じだ(った)、と多分、それを体験したことがなくても、確信としてその体験を知っているかのように思わせてしまうパン。

ちなみにカイソさんのマロンケーキにもやられる。高級和栗とか使うんでなく、あの、ばらまき土産用に使われるフランスの安いチューブ入りとか缶詰になってるマロンペーストを使ってるらしんだけど。(貧乏フランス学生が、ドイツ留学とかするときに、ホームシックにならないように持ち込む食材の一つだとテレビ番組で見たことある。ホームシックになると、あのペーストを温めたミルクで割って飲むんだって。日本人には栗ペーストのその摂取法は糖度高すぎて無理なんだけどね。)

なんだろう。カイソさんのマロンケーキ、フランス人以上に、フランスのノスタルジーを鷲づかみ。いや私はフランス人じゃないけどね。実際には、多分多くのフランス人は、甘味が少なくて日本らしい味とか言うかもなんだけどね。でも日本好きになって日本に住んでしまったフランス人が、自分の故郷を改めて良きものとして思い出して泣く味なのよこれは!!! (と、なぜ私が泣く。。。)なんなの構造は。

日本人のすごいシュミラークルって、ほんとすごいと思うのです。リアリティーを超える。リアルから逃げてシュミラークルに行っているのではなく、自身の感覚を信じつくしたシュミラークルは、今のリアルも幻想にしちゃえる力があるというか。自分を信じて進めばいいんだと現実からも自由にしてくれるような。未来への自分回帰。(もはやもう何を言っているのか。ただパンとケーキを食べただけなのに!)

で、そんなパンとケーキを食べながら思い出したのは、こちら。

https://www.youtube.com/watch?v=RW21P6Ax6oc&feature=youtu.be

www.terrax.site

音楽をことさらに聴く方というわけではないけれど、ショパンは苦手と思っていました。それが10年ほど前、パリの音楽博物館で、フォルテピアノで演奏された「雨だれ」の録音を聞いて、それまでのショパン嫌いが反転し。

時間軸次元だけでいえば、それとは正反対のことような電子音打ち込みのショパン。でも自分には、当時のフォルテピアノ演奏を聴いたときの衝撃に匹敵するか、もしかしたらある意味ではそれ以上か。ショパンが当時ひいていた楽器で弾かれる世界を信じてみようとした人も、はじめはすごい先鋭感覚だったのだろうけれど。古楽器で弾くのは、当時のありかたをオーセンティックとしてみましょうという外的な定点ができてもしまう。けれど、電子音の打ち込みって、どこに外的な定点(正当性)があるわけでもない。ただ自分の環境の中で自分にとっての本物を表現する。

ル・プチメックさんやらカイソさんやらのパンと同じ種類の感動を感じてしまうのです。シュミラークルは、リアルじゃないとは言わせない。そもそも今のリアルだって幻想かもよ、という認識さえ許して、自由に未来の自分に回帰していっていいんだよ、と。

このショパンを聴いて自分はどんな反応になったかというと、最初はひたすら笑い転げ。次の日は、なんだかもう理由もなく泣けるんですけど、という。。。

 

ただパンとケーキを食べただけで、ここまでいろいろ思えるのも希少体質かもしれないですが、おかげさまで多少面白がられて、いろんな人に餌付けしてもらえています。ごちそうさまでした。感謝。

嗚呼マロンケーキ。下北沢はちょっと遠い。ときどき住みたい。

マロンケーキの写真はございません。